システム行動学研究会 システム行動学研究会 (Systems Ethology)

前夜祭 特別セミナー

第52回 行動進化生態こまば教室

「宮竹貴久 駒場スペシャルセミナー ~システム行動学研究会 前夜祭~」


第一回 システム行動学研究会の前夜祭として、同キャンパスにて岡山大 宮竹先生をお招きし、セミナーを開催いたします。
宮竹先生は本セミナーのテーマである行動・進化・生態のすべてをテーマに、昆虫を始めとした小動物が環境とどのように相互作用して生きているか、特に環境変動が生物の形質に及ぼす影響についてご研究されています。
中でも今回は捕食回避行動として考えられている”死にまね”にフォーカスして、基礎から応用まで幅広くお話していただきます。

本テーマは翌日に控えたシステム行動学研究会と深く関連があるということから、連携して開催することになりました。
本講演はハイブリッド対応です。参加登録、および詳細は以下のウェブサイトからご確認ください。

第52回 行動進化生態こまば教室

「宮竹貴久 駒場スペシャルセミナー ~システム行動学研究会 前夜祭~」
2025年5月29日(木曜日) 東京大学駒場Ⅰキャンパス
18:45-19:45(延長の可能性あり)ハイブリッド開催(アーカイブなし)
オーガナイザー:納富祐典(東京大学)、工藤達実(東京大学)、朝鍋遥(東京大学)

行動進化生態こまば教室HP


宮竹貴久 / Takahisa Miyatake

岡山大学大学院環境生命自然科学学域(農学部)


「死んだふりを科学する」


講演要旨

 動物はなぜ死んだふりをするのでしょうか?ファーブルは甲虫の死んだふりを観察し、この行動を神経的に陥る仮死状態だとしました。その後、この行動の適応的な意義について誰も注目しない時代が続きました。演者は昆虫がどんなときに、なぜ死んだふりをするのかについて四半世紀にわたって調べてきました。最初はアリモドキゾウムシを材料として死んだふり行動を観察しました。次にアズキゾウムシ、そしてモデル生物のコクヌストモドキ(いずれも甲虫)を使って死にまね持続時間の長短を育種し、どんなに刺激しても死にまねしない集団と少しの刺激で瞬時に死にまねする集団を確立しました。これらの集団を使って死んだふりが生存上有利なことを世界に先駆けて十分なデータで示し、死んだふりと遺伝的にリンクする形質を探索し、その分子レベルの研究も行いました。セミナーでは、死んだふりの行動観察に始まり、「死にまねシンドローム」と演者らが名付けたドーパミンを主軸とした多面発現モデルの提唱に至るまでの過程についてお話します。